簿記を勉強し始めたときの最大の疑問は、貸借対照表において「純資産」が右側(=貸方)にくることでした。
そして、貸借対照表と損益計算書の当期純利益が、必ず一致する理由もよくわかりませんでした。
この記事では、この2つの疑問に対して分かりやすく解説しています。
「純資産」が貸借対照表の右側=貸方にくる理由
※貸借対照表の左側が借方/右側が貸方
貸借対照表(=バランスシート)は、企業の一定時点における財政状態を表した計算表です。
だから、財政状態を表す「資産」や「負債」は損益計算書ではなく、財政状態を表した貸借対照表に載ります。
さて、「資産」を左側(=借方)においた場合、「負債」が右側(=貸方)に来る理由は分かりますか?
資産と反対のものだから、貸借対照表でも反対側に置いちゃえ!では、「純資産」が貸方にくるイメージがつかめません。
※ここからが本題
貸借対照表の借方では、「会社に資産がどのくらいあるのか?」を表しています。
貸方では、「その資産がどのように集められてきたか?という資産の調達方法」が示されています。
「資産を集める」を「会社にお金を集める」に置き換えて、考えてみましょう。
「会社にお金を集める」ときには、①他人からお金を借りてくる方法がありますよね。
これが、銀行からお金を借りてくる「借入金」や、仕入れ先の企業につけにしてもらう「買掛金」です。
これらは借りているものなので、返済義務が発生します。これが負債にあたるんです。
そして、会社にお金を集める方法には、②自分でお金を出す(=会社に出資する)方法もあります。
これが純資産(=自己資本)です。自分のお金なので、返済の義務はありません。
※株式を発行して得たお金も、返済義務がないために「純資産」にあたります。
例えば、自分のお金である1万円を会社のお金に(=会社に出資)した場合。
会社の立場から見れば、現金という「資産」が増えて、資本金という返済義務のない「純資産」が増えます。
(現金)10,000 (資本金)10,000
逆に、会社のお金だった5000円を私用で持ち出した場合。
現金という「資産」が減少して、もともとあった資本金という「純資産」が5000円減少します。
(資本金)5,000 (現金)5,000
お店で販売している商品5000円を持ち出した場合。
商品を仕入れる際に発生していた、仕入という「費用」を減少させて、資本金という返済義務のない「純資産」が減少します。
(資本金)5,000 (仕入)5,000
貸借対照表と損益計算書の当期純利益が一致する理由
資産を集める=会社にお金を集める方法で、①他人からお金を借りる②自分でお金を出資するという2つを紹介しました。
この2つだけが会社にお金を集める方法かといえば、そうではありません。
実は、会社にお金を集める=資産を集める方法がもう一つあります。それは、③会社が商売をして稼ぎだす方法です。
会社の稼ぎとは、決算時に「収益」-「費用」=「当期純利益」で求められますよね。
この「当期純利益」は、純資産に積み上げられます。だから、貸借対照表と損益計算書の当期純利益が一致するんです。
具体的な例を出して、ざっくりと考えてみましょう。
2017年12月31日 A社の貸借対照表
資産→現金50万円、商品10万円
負債→借入金20万円
純資産→40万円
2018年度 A社の取引
5万円の商品を8万円で販売した
(現金)80,000 (売上)80,000
2018年12月31日 A社の損益計算書
収益→8万円
費用→5万円(当期仕入0万+期首商品棚卸高10万ー期末商品棚卸高5万)
当期純利益→3万円
2018年12月31日 A社の貸借対照表
資産→現金58万円、商品5万円
負債→借入金20万円
純資産→43万円(前期繰越40万+当期純利益3万)
これはよくよく考えると、すごく自然なことです。
5万円の商品を8万円で売って、お客さんから現金8万円をもらった。
資産の部では、現金が8万円増えて、商品が5万円減って、差し引き3万円の増加です。損益計算書では、この差額である3万円が当期純利益にあたあります。
貸借対照表では、借方に企業の資産、貸方にその資産がどのように集められてきたか?を表しています。
では、この3万円は、他人から借りてきた返済義務のある負債か?
違いますよね。
会社の儲け、つまり自分のお金なので、返済義務のない純資産にあたります。
だから、純資産を3万円(=資産が増えた分だけ)を増やして、初めて貸借が一致するのです。
今日のまとめ
貸借対照表では、借方に企業の資産、貸方にその資産がどのように集められてきたか?を表しています。
だから、自分でお金を出した「純資産」は、貸借対照表の貸方にきます。
そして、会社が儲けるとその分だけ資産が増えて、増えた資産がどのようにして集められたかを表すために、貸借対照表の純資産の部に当期純利益として計上します。
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